山内農園のこだわりポイント
1)洗わなくても食べられる野菜を育てたい
洗って農薬を流さないと口にできないのはおかしいんじゃないか。子どもが畑になっている野菜を見つけて、そのままかぶりついても安心な野菜を作りたいと思っています。トマトなどの生食する野菜は農薬をかけずに、キュウリ・根菜は最低限の回数に抑えて育てています。
2)収穫量アップは生物の助けを借りて
最低限使わなければいけない農薬はできるだけ微生物農薬を選び、天敵となる生物の力を借りて害虫を減らします。また畑に巣箱を置いてミツバチを放し、受粉を促進させます。収穫量アップのために他の生物の力を借りているので、それらが弱ってしまうような強い農薬は使えません。
3)雑草と競いながらタフな野菜にする
強い農薬を使わないため、どんどん雑草が生えてきます。雑草の生命力はとても旺盛で草取りが追いつかず、夏には畑が雑草だらけになります。でもその生命力と競わせて、タフな野菜に育てたいと思っています。
もちろん、雑草も冬が近づくとすべて枯れます。本格的な冬になる前に枯れた雑草を畑の土にすき込んでおくと、次の春には栄養分に変わってくれます。野菜にとっては敵だけど、最後は力になってくれる……良きライバルのような存在かもしれません。
春
夏
秋
冬
じゃがいも
山内農園ではとうやの他に、レッドムーン・マチルダ・インカのめざめという、珍しい品種も作っています。畑が狭いので少しずつしか作れませんが、その分いろいろな品種を作るようにしています。
マチルダは十勝の方でよく作っている品種で、ニセコでやっているのは僕のところだけだと思います。
これ、見てください。
ストローという、じゃがいもの茎から実に向かって栄養が送られる管です。じゃがいもはここを枯らさないと、管に沿って小さな実がもう1個ついてしまう『2次成長』を起こします。2次成長でポコっと実がつくと変形果と言われて、ハネ品になってしまう。だから普通はデシカンと呼ばれる農薬をかけて茎とストローを枯れさせます。
でも、変形を防ぐためだけの農薬をかけることはしたくない。だから、うちでは2次成長が起こる前に収穫します。
出荷するとき、ストローの周りは傷みやすいので手で取り除いています。マチルダはストローが細くて傷みが少ないし、選別機にかけている間に折れてくれるからありがたいですね。
◆畑で
うちでは早出しといって、一般的な植え付けの時期より早めて育てています。今年は4/21にとうやの植え付けをして、7月末に収穫しました。
2021年は北海道のじゃがいもの作況は非常に良くないのだけれど、うちは早出しで育てていたことで結果的に高温少雨の時期を避けられました。早出しのいいところは、暖かくなって雑草や虫の活動が盛んになる前にある程度成長させられるところ。影響が少ない分、農薬の使用回数を減らせるのがいいと思っています。来年からは、すべて早出しで育てるつもりです。
じゃがいもにとっての適温は、人間の適温と似ていると思っています。今年みたいに暑いと人間も夏バテするけど、じゃがいももバテちゃって大きくなれなかったんじゃないかな。
古いトラクター
僕はもともと車とか機械が好きで、自然と家にあるトラクターにも興味を持ちました。
うちには30年、40年と使っている古いトラクターがあって、手入れを繰り返しながら使ってきたのを見て育っているから、ちょっとした修理は自分でやるという意識が生まれたんだと思います。それに古い機械ほど構造がシンプルだから、一度しくみを知ってしまえば症状に合わせた調節もきくんです。最新式のトラクターは電子制御なのでこうはいかないんですけどね。
日々実感するのはちょっとしたことに気をつけているだけで、機械をぐんと長持ちさせられるということ。トラクターは農家の大切な仕事道具です。長年使い込んだものほど使用感が体に馴染んでいるから、同じものを長く使い続けたい農家は多いんですよ。愛情を持って仕事道具のメンテナンスをしていきたいですね。
キャベツ
今年のキャベツは、甘くていい味になりそうです!うちのは「ふゆこま」と北海道の伝統野菜の「札幌大球」です。
ふゆこまは、晩秋に収穫する予定なので、9月のはじめはまだ芽キャベツくらいの大きさです。大きく見えるけど、食べられる部分はまだすごく小さいんですよ。うちの畑では除草剤を撒かないので雑草が生え放題ですけど、あえてキャベツと雑草を戦わせてタフに育てています。害虫の駆除も化学農薬はなるべく使わず、微生物農薬(害虫の天敵の力を借りて駆除する農薬)を使います。モンシロチョウはキャベツの葉を食べてしまうのでなんとかしなければいけないのですが
ふゆこまは、しっかりと葉が巻かれて、密で硬くなります。やわらかくて甘みがあるから、なんとかして全国発送してたくさんの人に食べてもらいたいなと思っていますね。
札幌大球は、今は普通のキャベツの大きさに見えますけど成長するのはこれからです。1個で10kgほどになります。これも甘みがある品種で、葉がしっかりして漬けもの向きですね
キクイモ
キクイモってこんなに大きくなるんですよ!2mくらい。
9月後半から花が咲いて、甘い香りが漂ってミツバチもたくさん飛んできます。花が枯れてから、ぐんとイモが成長するんです。秋は10月頃から収穫できます。
うちでは、キクイモは2年かけて収穫しています。1年じゃゴボウみたいなサイズにしかならないので、2年かけて太く大きく成長させます。畑を5面作って、植え付ける時期をずらしながら毎年2回、春堀りと秋堀りを収穫できるように工夫しています。ローテーションの中でヒマワリをを育てて、花が枯れてから土にすき込んだりもします。栄養分になるんですよ。
うちのキクイモ畑は土の粒子が非常に細かい粘土質なので、雨が降るとガッチリと固まってしまうんです。だから春掘りは、雪解け水が染み込んでガッチガチになっているのをユンボ(パワーショベル)で掘り起こさなければいけなくて一苦労。
それに、春堀りは一冬雪の下で寝かせるので、雪が少ない年は凍ってしまう可能性があるんです。初めての年は全て凍って、傷んで全て捨てたこともあり、今でもどうなるか緊張します。でも春堀りのキクイモは冬の間に甘くなるので、うちの家族も大好きです。
いろいろな料理に使えるし、食べてもらいたいな。
たまねぎ
2021年は、玉ねぎは大きくなりませんでしたね。高温少雨だったから、肥料をまいても水がなく、栄養分を吸い上げられなかったためと考えています。
玉ねぎは、植えて1年目は大きくならなくて、2年目以降からは普通のサイズになります。そして3〜4年同じ畑で育て、その後輪作で別の畑に植え替える、というサイクルで育てます。
収穫は埋まっている土ごと機械で持ち上げて、地表に出してからしばらくそのままにし、天日でしっかりと乾燥させます。乾燥させないとカビてしまうから。
うちでは玉ねぎも、雑草を取らずに戦わせながら育てます。雑草は本当に強い。1ヶ月近く雨が降らなかったときは出てこなかったけれど、ちょっと雨が降ったら2週間で1mくらいに伸びました。その強さと競わせることで、野菜の苗も丈夫になってくれると思っています。
かぼちゃ
山内農園で作っているのは、栗五郎、くり将軍、こふきの3種類です。少しずつ外見も、育つタイミングも違うんですよ。
かぼちゃは雌雄異株ですから、受粉させるためにミツバチを畑に放しています。あそこにあるのが巣箱。除草剤や防虫剤は使えないんですよね。ここもキャベツ畑みたいにすごく雑草が生えているのはそのせいです。他にトマトやキュウリもミツバチの力で受粉させています。
うちの畑はどこも雑草ばっかりで、普通の畑じゃないみたいでしょう。でも防虫剤でミツバチが死んでしまうということは、少しでも生き物の体に影響があるということだから、なるべく回数は少なくしたい。どうしてもまかなければいけないときは、真夜中か日の出くらいのミツバチが活動しない時間帯にさっとやります。
化学農薬は、農協で使用回数を決めています。僕はその回数より少なくして、使わなくていいものは使わずに育てたい。だから時期を選んだり、微生物の力を使ったり、いろいろ工夫をしている最中です。